手汗の手術は受けるべき? 値段や後遺症など、知っておくべき手術のこと

手汗 手術
「手汗の手術ってちょっと怖い…」
「手汗はよくなっても、手術の後遺症がひどいって聞いたけど…」

手汗用クリーム、手汗用の制汗剤、ボトックス注射などの治療…「何をやっても手汗がよくならなかった」という場合の最終手段として、手汗の手術が考えられます。

手術は、手汗を減らす効果はかなり期待できますが、「代償性発汗」という後遺症に悩まされて後悔する人も少なくありません。

●手術はどのくらい手汗に効くの?
●手汗の手術にかかる値段は? 保険は適用されるの?
●手術の流れは? 入院は必要なの?
●手汗の手術、後遺症や副作用の心配は?

手汗の手術で後悔しないために、効果や値段、後遺症、副作用など、手術を受ける前に知っておきたいポイントをまとめました。

手汗の手術は、具体的にどんな治療?

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まずは、手汗の手術の効果や、汗が止まる仕組みを簡単に見ていきましょう。

手汗の手術は「胸腔鏡下交感神経節遮断術(Endoscopic Thoracic Sympathectomy)」と言い、略して「ETS手術」と呼ばれます。

胸腔鏡下交感神経節遮断術(ETS)

発汗の指令を伝達する交感神経を内視鏡を使った小さな手術で遮断するものです。
交感神経は背骨の左右を上下方向に走行しているものですが、手のひらの多汗症の治療では、これを第二または第三肋骨の高さで遮断、またはクリップしなくてはなりません。この治療法は、現在のところ多汗症治療の最終的な治療法です。この方法は一度行うと、掌の発汗を劇的に減らすことが可能で、しかも多くの場合、その効果は生涯持続するほど強力です。

引用:NTT東日本 関東病院 多汗症の治療

手汗は、脳からの「汗をかけ」という命令が脊髄(せきずい)と交感神経を通り、汗腺に届くことで出る仕組みになっています。

ETS手術は、脳からの命令の通り道である交感神経を切断。発汗を促す命令が汗腺に届かなくなるため、手汗を大幅に減らす効果が期待できるのです。

また、一度切った交感神経が自然に元に戻ることはないため、手術の効果は一生続くと言われています。

<手汗の手術は、ほかの手汗対策より効果的?>

手術以外の手汗対策、例えば手汗用のクリームや制汗剤、ボトックス注射などは、手のひらの汗腺を休ませることで手汗を止める方法です。

しかし、いくら汗腺の活動を抑えても、脳からの命令の通り道である交感神経が活発に働いてしまうと、その影響を受けて汗腺が反応し手汗が出てしまいます。

一方のETS手術は、汗腺に直接作用するわけではなく、脳からの命令の通り道を断ち切る方法。汗腺の活動原因である「脳からの命令」が来なくなるため、汗腺が動くことはなくなります。

「汗腺が動かなくなる」という点では、ETSはほかの手汗対策より効果があると言えるかもしれません。

値段・費用・受診科など、手術の詳しい内容

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ここからは、手汗の手術を受ける際の医療機関の選び方、費用、手術までの治療の流れなどを紹介します。

Q.何科を受診すればいいの?

手汗の手術が受けられるのは、主に外科や整形外科など。
最近では、手汗の専門外来を設けている医療機関やクリニックもあります。

医療機関を選ぶ際は、手術の設備や衛生環境が整っていることはもちろん、ETSの経験がある医師がいるかどうかも重要です。あらかじめ病院に確認しておくといいでしょう。

Q.値段・費用は? 保険は適用になるの?

手汗の手術には保険が適用され、値段は一度の手術で9~10万円。
ただし、手術前には検査を行う必要があり、この検査におよそ5~6千円かかります。

Q.手汗手術までの流れは?

手汗の治療において、いきなりETSを勧められることはほとんどありません。
まずは手汗の症状がどのくらい重いのかをチェックし、手術を行う必要があると判断された場合にのみ手術を受けることができます。

治療の流れの一例を紹介しましょう。

1.事前のカウンセリング、検査
・手汗の症状は手術が必要なレベルか?
・手術を受けられる健康状態か? など
   ↓
2.手汗の手術当日
・手汗の手術は日帰りがほとんど。
・病院によっては数日の入院を勧められることも。
・手術時間は、麻酔の準備などを含めて約1~2時間。
・手汗の手術後、2~3時間は病院で休憩。
   ↓
3.効果や副作用を調べるための診察
・数ヶ月後(病院によっては数週間後)、再度病院で診察。

手汗の手術で避けては通れない後遺症

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手汗の手術を受けるとき、必ず知っておく必要があるのが「代償性発汗」という後遺症。
この代償性発汗、手汗の手術を受けたほぼ100%の人に生じる副作用で、ETSを受けたことを後悔する人もいるくらい厄介なものなんです。

手のひらの汗を止めるのに有効な神経節を遮断すると、交感神経の構造上の理由から手のひらだけでなく、近接する部位の汗も止めてしまうのだ。手の甲を含んだ上肢、腋の下や頸部、ときには顔面、頭部などの汗も止まる。このため、全身の冷却に必要な熱放散が不足するので、代償性に他の部位の汗が増える(代償性発汗)。

引用:菅屋潤壹『汗はすごい』(ちくま新書,2017)p.243

手術によって手汗を止めると、手のひらだけではなく、上肢(腕)、わきの下、頸部(首)、顔、頭など、上半身の汗も一緒に止まってしまいます。

汗には、夏場や運動後などの体温が上がったときに、体の温度を下げる働きがあります。汗が止まってしまうと体温調節ができず、熱中症などになる危険も。

体温を適温に保つため、汗が出なくなった上半身に代わってほかの部位で多く汗をかくようになる…これが代償性発汗の仕組みなんです。

重い代償性発汗で、手汗の手術を後悔する人も

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手汗の手術の後遺症である代償性発汗ですが、「手汗に苦しまない生活が手に入るなら、少しくらいの副作用は構わない」とも思いますよね。

しかし代償性発汗は、人によっては「手汗が出ていた頃のほうがマシだった」とまで感じる深刻な後遺症。

手汗の手術の後遺症に悩む人が設立した市民団体「ETS被害者連絡会」のホームページでは、代償性発汗の辛さについて次のように書かれています。

私たちは、ETSを受けた後の方が受ける前よりも生活の質が極端に落ちてしまいました。通勤、通学、仕事、勉強など、日常生活のごく当たり前のことができなくなってしまい、たいへん苦しんでいます。(中略)

ETSを受けた体では、約25度を超える気温になると、通常では想像もつかないくらい大量に汗をかき、顔や首の後ろなど、汗をかかなくなった部分には常に熱がこもり、頭がぼうっとしたり、頭痛が生じたり、体力が落ちたりして、仕事や学校生活に著しく支障をきたしています。

ETSを受けると、受ける前よりもが仕事が制限され、実際に働けなくなったり、なんとか働けても常に健康面に不安を抱えながら仕事をせざるをえず、最終的には、頼る人もいなくなり、収入を得られなければ、死につながります。

引用:ETS被害者連絡会 声明文

ETSを受ければ手汗の症状はよくなりますが、代償性発汗が仕事や学校生活に大きく支障をきたすため「手汗の手術なんて受けなければよかった」という人も。

現在の医療技術では一度切断した交感神経を再びつなげることはできず、一生、後遺症と付き合っていくことになります。

代償性発汗について、医者はどう考えているの?

代償性発汗の考え方は、医師によって様々。
手汗の対策として手術を勧めてくる医師もいれば、リスクを考慮してほかの方法で手汗対策を勧めてくる医師もいます。

手汗の手術を検討するときには、医師と十分に話し合いを。先生があまり後遺症や副作用に詳しくないようだったら、別の医療機関に変えることも考えましょう。

最近は手汗の手術の技術が進み、代償性発汗が重く出ることは減ってきていると言われています。
手術は、手汗の悩みを解決するための最後の希望。一概に悪いとは言えませんが、ほかの手汗対策では全く効果が無かった場合の最終手段として考えて。

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手汗の手術は慎重に、十分な検討を

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仕事、学校、プライベート…日常のあらゆる場面で障害になる手汗。
ETS手術は重い後遺症の心配もありますが、手汗の改善には有効な治療法のひとつです。

●ETS手術は、交感神経を切断して手汗を止める方法。
●保険が適用され、値段は9~10万円。
●後遺症として「代償性発汗」が起こる可能性も。

手汗で悩むことのない人生はきっと素敵なもの。しかし、副作用である代償性発汗に悩まされているという人も。

「手術を受けてよかった」という人がいる一方で、後遺症のことを深く考えていなかったために後悔している人がいるのも事実。
医師とのカウンセリングには十分な時間をかけて、悔いの残らない選択をしてくださいね。

執筆ライター

執筆ライター:美香

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